「日本人は・・・日本は・・・どうだったの?マッカーサーはいい人なの?悪い人なの?なんだったの?」

2012年暮、マッカーサー元帥のHonor Guardだったデイビッドに訊いた。

「戦前の日本人は悪かった。だけど戦後の日本人は良くなった。マッカーサーは君たちのstepfather(義父、まま父)だ。」

受け取ったメールを読んだら涙が止まらなくなった。その時に、日本人の自分がこんなにも深く傷ついていたんだと知った。

今もそのメールを見返す事ができない。だから、今書いた文章は、私の記憶の中に残っているもの。

私は、デイビッドに送ったメールに、希望を乗せて、日本人は素晴らしかった、悪くなかったと言って欲しかったのだと思う。

受け取ったメールを見て、私は混乱した。日本人は悪かったと言い、マッカーサーが私たち戦後の日本人のstepfatherだと言われたことに、悪意というか、わかってないというか、反感を持った。でも、デイビッドは、私のことをとても大切にしてくれる。だから、彼には悪意はないはず。だから尚更混乱した。

明治維新を少しずつ理解し、その背後にあった事、そこから他国との戦争が続く時代になった事、その後ろにアヘンがあったこと。その上での満洲。

GQHだけが私たちを洗脳したんじゃない。日本には大義があったとか、日露戦争で勝ったとか。そういうことも、私たちは幾重にも重なる情報が被り、巧妙に教えられてたと思う。知ったつもりになっていたと思う。

今朝、今も見返す事ができないメールのことを考えながら、デイビッドの愛を感じた。

きっと、彼から見たら自分の子供や孫のような年頃の、日本の子供に、どう言葉を書くのか何度も考えたんじゃないかと思う。その後、デイビッドに会いにカルフォルニアのサンディエゴに行くんだけど、彼は、私をとても大切にしてくれた。私を空港に迎えにきてくれ、痴呆になった奥さんをやさしくケアしながら、私の身の回りのことをやってくれた。

家の中は見事なまでに整頓されて、デコレイトされていた。今この写真をアップして気づいたんだけど、壁にかかっている絵は日本のものだ。

朝、イングリッシュマフィンにストロベリーのヨーグルトをあえたものを乗せたものを作ってくれた。

メモリアルデイの日だった。朝、メモリアルデイ式典に行き、その後、私は、退役軍人たちが集うバーに連れて行ってもらった。

ショーケースに「Army Daughter」のワッペンがついたかわいいキャップがあった。

「デイビッド、これが欲しい!」

デイビッドは買ってくれた。

「ねぇ、これ、Adoptedって書いてくれない?だって、私、本当のArmy dauterじゃないから」。養子縁組をしたという意味。

週末は妻とデニーズでランチをするんだと言って、デニーズに行った。

デイビッドは「君は、普通の日本人と違う」と言った。今まで会ってきた日本人という意味だと思う。

「え?どう違うの?」

「君はmarverikだ」と真面目な顔をして言った。

「marverik? どういう意味?」

「君は自分を持って、一人でなんでもやる。ここまできた。とにかく、君はマーヴェリックだ」と笑った。

家の中の整頓、質問への答え方、行動、会話、全てがキレていた。

「デイビッド、あなた、すごく頭いいよね。すごくシャープ」というと、彼は、自分のIQがとても高いとサラッと言った。マッカーサーのHonor Guardは、かなり優秀な人たちが選ばれるのだと知った。

デイビッドは、私を大切にしてくれた。とても温かだった。

でも、私の奥では、あの言葉が残っていた。それは、アメリカ人のデイビッドのせいじゃない。私を傷つけようと思ったはずもない。

明治維新から太平洋戦争までの日本のことを少し知り、この数日、ショックを受けて固まってた。

真面目で優しかったお父さんが、実は、麻薬を売って私たちを養育していたんだと知ったような感じ。たくさんの人たちが殺されたり、薬漬けになったり、いろんな闇があって犠牲があって、自分たちは何も知らずにお父さんはいい仕事をして、国のために働いていると思っていたという感じ。

デイビッドはその歴史を知っていたのだと思う。だから、彼はメールの言葉を考え、選んだと思う。私が傷つかないように。だけど、本当のことを言わないといけないと。

今朝は、涙が出る。

涙が出るのは、心に何かがやさしく触れたから。

デイビッドの私への愛と、日本への、戦後の子供達への愛を感じたんだと思う。

そう・・・私たちは、本当の歴史を知らずに、彷徨い、混乱し、誰かを責める。誰かを責めないと、誰かや何かを悪者にしないととりあえずの納得、落とし所が見つからない。

歴史を知るということは、自分の心、アイデンティティに深く関係する、影響するとてもとても大切な作業なんだと、私は思う。

明治維新を知ると・・・私たちのお父さんが、大まかに、日本の幕府→イギリス勢力→アメリカの勢力に代って行ったのかもと気づく。そう考えると、デイビッドの言ったマッカーサーはStepfatherだというのも、理解ができるかもしれない。

今なら全てが「良い」「悪い」という二元性ではないこともわかる。でGHQやマッカーサーがいいとか悪いとか。そう簡単には言えない。そういう時代だったのだと思う。私が、デイビッドに出会い、こういう経験をしたことも、時代とタイミングが合ったのだと思う。それが、宇宙の采配なのかもしれない。