キューバに居ると、私はある意味お金持ちの部類になる。
経済格差の上の人として暮らす。

キューバ人は本当に、月給20ドルなのか?
公務員はそんなもんだと思う。仕事によっては15ドルの人もいる。裁判官をしている50代の友人は60ドル。今は自営業者も増えて、格差は広がってる。

学費や医療が無料だと言っても、月給20ドルで暮らす事は殆ど無理。誰かが助けないと生活が苦しい人が多い。与えすぎると、または簡単に与えると、それが当たり前になったりもする。また簡単に外国人からお金を巻き上げようとする人も結構いる。

頭で考える事と、現実に体験して自分がどう感じ、どう考えるか。
貧乏人にお金持ちの気持ちはわからない。
争わなくても、周りと比べなくても、私はここに居るとお金を持っている側の人間。
一般のキューバ人と私の間には格差がある。

経済格差の中で、富裕層としてのロールプレイングゲーム。

そんな風に感じる事もよくある。
立場や役が変わると、思っても無かった発見も色々ある。

キューバは観光が一番の経済収入で外国人観光客の世界はキューバ人とは全く別世界。
観光客はお金を使うもの。それが当たり前の認識。観光客としてはこの国は物価がそれ程安い訳でもない。特にホテルなどはかなり高いと思う。
ハバナの旧市街の観光地のエリアを「ハバナ・ディズニーランド」と私は言ってる。

私はキューバ人でもなく、「観光客」でもなく、キューバ人の中に混じる外国人。

経済的な貧しさ。

現実には貧しさから心に歪を持ってしまう事を否めない。
貧しさの中で、心も貧しくなっていく。
そういう歪みを感じると、哀しくなる。

経済的な情緒が飢餓を経験して、歪んでしまうというか。
もちろん、そうじゃない人もいる。精神的に強いんだと思う。

仕方がないんだと言いきかせる。

色んな要因が重なって、貧しさや歪を作っているように感じる。

アメリカからの経済制裁。
それがどの様に影響するのか。爆弾の落ちてこない戦争のようなもの。

家族の在り方や責任。
幼少期に不安定な家庭環境で育った人は多い。特に父親の不在は多い。だから責任意識の無い男性が多いのだと感じる。それが当たり前というか。約束を守れない人が多いのはそういう事が原因の一つだと感じてる。私が育った日本、父親像とは全く違う。お父さんの違う兄弟が当たり前のように暮らす。

(私から見て)不安定な家庭環境の中で強い精神力は育つのか?

教育の違い。
キューバは教育は無料で与えられる。私は子供がいないから学校教育の内容をあまり知らないが、パラグアイに行った時に、教育があっても、質と内容は全く違うように感じた。

例えば、アメリカ。私の親友の娘はアメリカでとてもいい教育を受けている。小学生の頃は年間の学費が300万円ほどかかると言っていた。一つの国の中でも公立と私立では学校や校区にもよるだろうけど、教育の質や内容にかなりの差があると思う。

だから全国民に教育が与えられているからと、自分の経験の物差しでは測れないと思う。また、日本でも、アメリカでも、どこの国でも、考えない人、本を読まない人、テレビからの情報を鵜呑みにする人、ゲームばかりする人はたくさんいる。私も30歳位まではそんな人だった。

学校教育の質やレベルはどうなのか?
この国に居ると疑問を感じる事はよくある。でも、もしかしたら、学校教育以前に家庭での教育があまりなされてない気がする。

日本は、家庭での教育が【躾】としてとても大事だった気がする。こんな私だけど、父の躾は凄く厳しかった。かなり反発もした。私は自由奔放に見えるかもだけど、根底にしっかり根付いてる。マジ、親父怖かった。

でも、そうった家庭での教育は日本の歴史の中で培われてきたものでもあると思う。日本は島国で、太平洋戦争に負けるまでは他国の占領や侵入を許してない。長く続いた江戸時代は戦の無い時代でもあり、鎖国をしてきた。余談になるけど、この鎖国というのは大航海時代やヨーロッパの植民地が広がった時代に自国を守るすごい政策だったと、ラテンアメリカに来るようになって思いうようになった。

私たち日本人は全く世界のスタンダードじゃないと思う。
戦後のアメリカの占領後に沢山のものが塗り替えられたとしても、長い歴史の中で培われたものが今も根底にあると感じるし、稀に見る、特有な文化と習慣を持った民族だと思う。言い換えれば、外国人からしたらとっても理解が難しい国民でもあると思う。宗教の形や内容、思想も歴史の中で培われた独特なものがあり、少なくとも聖書を基盤とするキリスト教やイスラム教、ユダヤ教の人等には理解がかなり難しいと思う。私にとっては彼らの何かを理解は出来ても、私の内部では受け入れてしまう事はないと思う。

そういった物が複雑にいろいろと私たちの根底にはあって、【躾】の内容も日本人独特かも知れない。その中に誠実である事や忠誠心、約束を守る事が根深くある。約束を守る事が当たり前な国民。

戦後の日本がどうしてあれだけ成長できたのか。そういった気質もある部分では作用しているとは思う。

とはいえ、インターネットやテクノロジーによって、時代が大きく変わってしまった中で、各国のボーダーが無くなり、価値観や習慣、スタイルが入り乱れるようになり、経済的に成長を続けるには、もしくはたもつには日本人にとって変化をせざる得ない時代になったと思う。

そんな私のフィルターからこの国を見ていると、乗り越えられない壁や、乗り越えたくない壁も結構あった。

社会システムの違い。
共産主義を残すこの国は日本とは全く違う。
「今日も仕事よ・・・」という人の目と言葉の中に、「働いてもお金にならない」「生活苦は変わらない」という諦めとフラストレーションを感じる事もよくある。

そうそう、あと、計画性の無い人がかなり多い。
貯金は勿論、翌週の食費の貯えも無かったり、あったらあっただけ使うとか。堅実性が乏しい。こんな私ですら多くのキューバ人から見たらかなり堅実で経済的に計画性のある人だと思う。

色んな要因を出してみたけど、この国が貧困から抜け出す事にはかなりたくさんのステップが必要だと思う。そして貧困が作り出す社会や心の歪みの解消はとても時間がかかる気がする。

とはいえ、日本には日本の問題が鬱積していて、きっと外国人が日本に来たら、日本で暮らしたら色んな事を感じたり考えたりするんだと思う。私たちは私たちの問題がいっぱい。

ふと今考えたんだけど、貧困層と言われて苦しい生活をしている人たちの多くは、家庭の問題や、教育の問題、情報弱者だったり、リテラシーが低かったり。かも。それはキューバの貧困とも通じるかも。

キューバでは大変なこともいっぱいだったけど、キューバで暮らしたことはほんとに本当にすごくいい経験だったと思う。こんな世界社会科見学の経験はなかなかできないと思う。中学時代の恩師も褒めてくれたわ(‘◇’)ゞ

部外者だから、その中に馴染み溶け込み切れないから感じ取れること。
違和感は自分を知る機会。

もう、キューバ暮らし終わりですか?
という感じの文章になったね。

来年の5月か8月くらいに引き上げようかなとも思ってる。

日本でうまい米毎日たらふく食える暮らしに飽きた頃にまたどっかいくかもだね。