儀式には色んな物を用意する必要があってほとんどパパが探してきてくれた。
古着 1枚
ロウソク 2本
葉巻 1本
ココナッツ 1個
赤と白の糸
穀物 5種
果物 3つ
ラム酒 1本
香水
卵
川の水
海水
白い鳩
アルコール
ジェルバなどの指定された植物
チョークの様なもので床に何かをかいてっる。私なりに分析。
祭壇からエネルギーの通路。その先に描いた円。多分私がそこに行く。その向こうにエネルギーが抜ける、浄化で取り除いたエネルギーを抜かす道しるべに様な図。
ガイドに聞くとそうだと言う。
揃え忘れた物がいくつかあってパパが買いに行っている間にガイドと話す。
日本ではどんな仕事をしてるんだ?
エッセンシャルオイルを売ってるの。アロマセラピーで使うオイルね。前はマッサージもやってたわ。私の手、感情や気持ちを読むの。ちょっと待って。やってみる。
そう言ってガイドの背中や肩を触った。
結構心配するけど、頭とメンタルで調整して、バランスとってるのね。その際にあなたの宗教もとても必要ね。
「そうだ。その通りだ」
「え?当たってるの!?えへへ。そうなの。私何でかわからないけどこの手が読むの。」
「私はいい人か?」
笑いながら言う。
「それはわからない。だって完全ないい人っていないと思うの。何を基準にいい人とか、私はわからない。私の前の彼の事をみんなは悪い人だと言う。でもなんでああなったのか、色んな過去や事情があるのだと思うの。私の手は彼がとても苦しんでいるのを感じたの。彼は悪い事をするけど、悪い人とは思わない。キリスト教は善と悪、いいか悪いか。」
「白か黒か」
「うん。でも、多分私は仏教徒で白か黒かじゃないんだと思うの。それぞれに色んな事情があるんだと思うの。だから私はいい人か悪い人かって言うのは解らない。完全ないい人なんていないわ。」
「おーい。おまえもやってもらってみろ。」
「えー。でも外れる事もあるよ~」
奥さんの背中と肩を触る。
見た目は静かで落ち着いて見える彼女。でも触ると結構せっかちだったり。かと思えばすごく心配性で混乱と悲しみも。何て言おう。。。
「見た目や態度は静かで落ち着いてるけど、すんごく複雑ね。とっても複雑な人ね」
2人で目を合わせて、
「当たってる。他には何かないか?」
「うーん、過去にすごく悲しい事とかあって、そういうのが身体に残ってると言うか」
奥さん私を見てそうだとうなずく。
「やだ~。でも本当に何で読めるのか解らない。」
「それは仏教か?」
「ううん、違うよ。なんか私が特別にそれができるっぽい。宗教は関係ないよ。アロマのマッサージしててそれき気付いたの。私の手が感じた彼を私は助けたいの」
パパがロウソクを買ってきて準備が整った。
持って来た古着を着ている服の上から着た。
「ロウソクを両手の持って祭壇にこういう風にやるんだよ。君の願ってる事を思いながら」
私はロウソクに火をつけ両手にロウソクを持った。
「ねぇ。。。解ってるかもしれないけど、彼はダメだし危険だよね、でも私は彼を助けたいの。それを願ってもいい?」
「いいよ。彼の名前はなんて言うんだい?」
「フェリッペカスティーヨ。。。あ、。ルイス フェリッペ カスティーヨ サンチェス」
ガイドは祭壇に向かってフェリの名前を何度か言った。
その後私は描かれた円の中に立った。海の水と川の水を私にかけた。目隠しをした。
私の身体に糸が巻かれた。
ガイドが口に含んだラム酒を私に吹きかける。アフリカの言葉とスペイン語が混ざった言葉で歌の様な言葉を歌いながら植物の枝を持って私の周りを動く。
「ショーコを浄化してくれ。悪いエネルギーを浄化してくれ。ショーコを守ってくれ。」
私に解るスペイン語を聞き取る。
マラカスの音と、ガイドの歌の様な呪文のようなものが聞こえる。
私の身体に巻かれた糸がハサミで切られる。身に付けた古着がハサミで切られる。
私の背後で何かが燃えてる。
目隠しが取られる。
川の水を私の身体に塗り、海の水も同じ様に私に身体に塗られた。
切り裂かれた私の古着を床に敷き
「これを持って身体を洗う様しなさい。その後この服の上におきなさい」
ココナッツ、果物、穀物。。。
最後にガイドは白い鳩を取り出した。とてもきれいな鳩だった。鳩の足を持ち祭壇を鳩でなぞると、それから私の身体を鳩で払う様になぞった。
古着に鳩をのせ、くるくると古着で巻いた。
儀式が終わった。
「ね、ねー。鳩は!?死んだの?やだ!」
「大丈夫だよ。後からちゃんと僕が放つから」
儀式が終わりパパが部屋に入って来た。ガイドが家で行う浄化の説明をパパにする。
「ショーコ大丈夫だよ。ちゃんと後で説明するから」
「ねぇフェリを助けたいの」
ガイドは彼を守る為の儀式に必要な物を書き出した。
結構色々いる。
正直面倒だし買い集めるのはパパ。パパはフェリを嫌ってる。それと私の考える「助ける」の意味がどうもガイドの理解と食い違っている様に感じた。
「ねぇ、これはしなくていいわ。なんか大変そうだし私ももう一人の人も怒ってはいるけど憎しみじゃないの。フェリの精神的な問題も踏まえて考えてる。あとはフェリの運命。だからもういいわ。私は彼を助けたいと言ってる。私の彼を助けるという意味は、彼を逃す事とかじゃないの。これ以上嘘を付く人生を続けて欲しくないの。それは心と魂を苦しめる事だと思うから。もうこれ以上心に苦しみを積み重ねて欲しく無いの。彼はこの国の法律で裁かれればいい。それが彼がやった事の当然の結果だから。彼が築き上げた「嘘のビル」を壊したいの。そうする事が嘘の無い人生を歩む為に必要なの。彼は私を恨むかもしれない。でもそれでもいいの。それが私の考えてる「彼を助ける」って意味なの」
ガイドは安堵した表情で私の「彼を助ける」と言う意味を理解した。
「この子はこんな子なんだよ」
パパがガイドに言った。
ーーー
コヒマルに戻ってルイシートの家に立ち寄った。
「ショーコ、問題はないか?」
「うん。大丈夫。今日はダニーのパパのトコ行って来たよ。サンテリアでクレンジングとプロテクションの儀式して来たの。」
そう言って、祭壇の写真を見せた。
「これはとてもパワフルな神様だよ」
「あ!そう言えば、カスカリーヤって何?パパに買ってもらうの忘れてた!!!」
「それならウチにあるよ。待ってて」
ルイシートはアポロチョコレートみたいな形の白い塊を持ってきた。
「いくついるんだい?」
「3つ。なんかさ。ユリと、ハチミツと、卵の白身と、それ混ぜてお風呂でどうのこうのってさ。」
「それだったら一個でいいよ。こうやって砕いて粉にして使うんだよ」
「ルイシート、サンテリアじゃ無いよね?なんでこんなもん持ってるの?」
「キューバじゃみんな当たり前に使うんだよ。浄化したりプロテクトをするんだよ。」
「こうやって足の裏や靴の裏にカスカリーヤで書くの。悪いものが入って来ない様にするのよ」
奥さんのジェシーが自分の足に描きながら言った。
「ええええええ!ルイシートサンテリアじゃ無いよね?普通にみんなやるの?ここはハーフアフリカだね」
「アフロキューバンだからね」
「ねぇ、サンテリアに行ったでしょ」
と言いながら、ルイシートに準備するもののリストを見せた。
「浄化とプロテクションだね」
隣人のグレセルが「ショーコ、サンテリアに行ったんだって!」
「うん。グアナバコアでね。前にグアナバコア歴史ミュージアムに行ったらサンテリアの事ばっかりだったの。だから、グアナバコアがいいと思ってグアナバコアの友達に相談して行ってきたの。なんかすんごいいい経験してるよ。」
「それはグアナバコアのどのあたりかい?」グアナバコアで生まれ育ったグレセルが嬉しそうに聞く。
初めての空気感だった。
彼らの中にもう一歩入って行ったような。彼らがもう一つ奥の扉をあけて私に「ようこそ」と言っている様な。
ここはアフロキューバン。
アフリカ文化が根強く残り、暮らしの中に溶け込んでいる様な。
呪いもあるけど、知らぬは部外者の外国人だけで、彼らは彼らのやり方で当たり前の様に対処してる様な。
だから、彼らのやり方でかけられた呪いは彼らのやり方で解くのがいいのかもとか。この国にはこの国の文化や信仰があってその信仰のチャンネルがあって、やり方があって。
「ねぇルイシート。ショーコは災難に会って気の毒って思ってる人もいると思うし確かにかなり大変だけど、私いまいろんなことを経験してるよ!すんごいいい経験してるよ!こういう一つ一つの経験がきっと強さにもなるんだよ!」
その3に続く。予定